知人のおばあちゃんは、京都で置屋さん(ゲイシャさんがいるとこ?)を今でもやってる。

そこの芸者さん達がある日、帰って来てこんな話をした。
お座敷に呼ばれて行くと、初老の品のいい夫婦だった。

珍しいなと思っていると、夫婦の間に座布団があって、スーツを着た80センチぐらいの男子の人形が座っている。

ちょっと引いてしまう芸者さん達。しかし、そこはプロ。にこやかに挨拶をした。

紳士然としたおじいさんが、
「今日はこの子の成人のお祝いなんです。どうかにぎやかにやってください」と言った。

この子というのはもちろんその人形である。

「みなさん、奇妙に思うでしょうが、この子は息子なんです。 今年で20歳になるので、酒を教えてお祝いをしてやろうと思いましてね。 どうか、人間と同じように扱ってやってください」

芸者さん達はちょっとおつむのかげんを疑ったけど、どう見ても医者か会社社長のような紳士だし、ご祝儀もはずんでくれたので、本当に人間のように話しかけ(答えるのはご夫婦だけど)お酌をした。

宴も終りのころ、ご夫婦がトイレに立った。

二人がいなくなると芸者さん達はいきなりくだけて、
「人形相手のお座敷なんて・・・あほくさ」
「なんや、高級なスーツ着せてから、きしょくわる」
「20歳って、20年もこの人形可愛がってるからえらいぼろぼろやわぁ」
などと言い合った。

そして、ご夫婦が戻って来た。

おばあさんがふと人形を見て芸者さん達を見回した。

「みなさん、私達がいない間にうちの息子をいじめましたね?この子が今私にそう言いましたよ」