宿直の先生は向かいの第二校舎の屋上に、女生徒がいるのを目撃した。

その生徒はフェンスを乗り越えていて、今にも飛び降りそうだった。
しかし、その女生徒は一瞬のうちに消えてしまった。

見間違えたかな?

先生は念のため校内を隅から隅まで見回ったが、特に問題はなかった。

校内には誰もいないはず。先生はいったん宿直室へ戻った。

そして、最後の見回りの時間。

先生は第一校舎を見回ると、1階の渡り廊下を渡って第二校舎へ行った。

さっきの女生徒は本当に気のせいだったのだろうか?

1階を見回っていると、先生は違和感をおぼえた。
(誰かが後ろから付いて来るような気がする)

しかし2階に行くと気配は消えた。

3階に行くと今度は廊下の向こう側からカツーンという音が聞こえてきた。

誰かいる!

急いで駆けつけると、そこには血の跡があった。

血の跡は点々と4階の方へ続いている。

もし女生徒が本当に飛び降りてケガをして、助けを求めて校舎に入ってきたなら、自分は責任を問われる。

「誰かいるのか~!」

先生は青ざめた顔で叫んだが、返事はない。

血の跡をたどって階段を登ったが、屋上へ向かう階段の前で途切れていた。

ふと、先生に疑念がわいた。
(屋上へ行く鍵はおれしか持っていない。なぜ、あの女生徒は屋上へ行けたんだ? )

得体の知れない何かがこの校舎にいるのか?

先生は逃げ出したい気持ちを抑え、屋上へ向かった。

屋上に出るノブに手をかけると、鍵はかかっていた。

その時、手に持っていたハンドライトの明かりがフッと消えた。

暗闇の中でズルズルと何かが階段を這って近づいてくる。

先生はもう恐怖で動くことができない。

「ひっ!」冷たい手が先生の足首をつかんだ。

それはさらに先生に近づき、さらっとした長い髪が頬に触れた。

その瞬間、ハンドライトの明かりが再び点いた。

目の前には頭が半分割れていて、見るも無残な女生徒の顔があった。

失禁状態の先生を発見したのは、部活で早出してきた女生徒だった。

その後先生は、昔飛び降り自殺で亡くなった生徒がいることを初めて知った。

足首をつかまれた跡は、一週間消えなかったそうだ。

先生は一年足らずで学校を去った。