「シングルなのに広い部屋!」

案内された部屋は広く豪華でした。

ここは大阪キタにあるホテル。心配になるほどごきげんな部屋でした。
今回の一人旅は、観光を兼ねて大阪で舞台を見たんです。

ゆっくり食事をして部屋に戻ったのが午後11時頃。

1日の疲れを癒したいとバスルームへ行くと、大きな鏡があって、その真ん中に「手形」がついていました。
(お掃除のときに拭き忘れたのかも)

しょうがないなと思って濡れたタオルで拭いてみても消えません。

まるで鏡の向こう側からべったり押されたような感じでした。

そのままお風呂に入ってベッドに入り、いつのまにか爆睡。

「俺が風呂出るまで起きてるはずだろ!」

心斎橋のネオンも消えた深夜2時頃、男の人の声で起こされました。

「そう??」

カレと来てたんだっけ…寝ぼけていた私は思わず答えました。

その男は「起きろよ!」と、ベッドの端を蹴ってきました。

ベッドから飛び起きて部屋を見回しましたが、もちろん誰もいません。

ヘンな夢を見たな…と思いながら、冷蔵庫から飲み物を出しました。

そのとき、部屋の匂いに気づいたんです。

入ったときには全く気づかなかったのですが、煙草の匂いがすることに…。

この部屋は禁煙ルームで灰皿も置いていない。

だけど、たったいま煙草を消したような新しい煙草の匂いがします。

私は煙草の匂いが嫌いなので敏感なんです。

早速、フロントに電話して部屋をチェンジしてもらったんですが…。

チェックアウトの時、マネージャーから謝罪がありました。

訳を教えてもらえませんでしたが、あの部屋は普段予約を入れない部屋だそう。

「今回は、シングルの予約がダブルブッキングしてしまい、あなた様をあの部屋へ振り当ててしまいました。誠に申し訳ありませんでした。」

このホテルによく泊まっている友人に聞いたら、以前、このホテルのダブルルームでカップルの心中があったと聞きました。

女性は薬物、男性は空調に浴衣の帯をくくりつけて。

広すぎたシングルルーム、もとはそのダブルルームだったんです。