363 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/11/05(土) 06:36:51.88 ID:9V/7Rjgx0

小学生の頃、ひまわり学級という障がいを抱えた子供が通うクラスがあった。
そこに、ずんぐりした軽度の知的障害を抱えた男子が通っていた。
そいつを仮にAと呼ぶことにする。というか名前知らないし。
ひまわり学級は普通、一般学級とは異なるタイムスケジュールで進んでいるため、その学級の生徒を見る事は稀なことだった。
それ故に一般生徒は、ひまわり学級についてほとんど知らないのが普通だったのだが、このAの知名度はかなりすば抜けており、一種の学校の名物君になっていた。
その理由としては、Aは気になる物は全て左右対称じゃないと気が済まないと言う、極めて重度の強迫性障害を持っていたからだ。
Aは異常なほどシンメトリーに拘り、左右非対称の物に関しては、自らが納得するまで弄って、何とかシンメトリーにしようとしていた。

これは現場を最初から見た訳ではないから何とも言えないが、一度、授業中にAの金切り声を聞いたことがある。
その後、窓際にいた友人に話を聞いてみると、どうやらAが中庭の細木の枝を只管折っていて、それを先生に止められたらしい。
しかし先生に腕を引っ張られながらも、金切り声をあげながら、何とか残りの枝もへし折ろうと執着してた……とのことだった。
数日後、中庭の細木が見事一本の棒のようになっていたんだから、どれだけAの執念が凄まじいかよく分かると思う。

とは言っても、全ての物に対して執着する訳ではなく、あくまで己の琴線に触れた物のシンメトリーだけに執着するらしい。
事実、他の細木には通常どおりだったし、人体模型や建築物などのシンメトリーもガン無視だったらしい。


ここで場面は変わるが、同じクラスの女子にHっていう子がいたんだが、その子が交通事故に合った。
幸い、命に別条はなかったものの、右足の脛から下あたりまでを失ってしまった。
一応、数ヵ月後には学校に顔を出す様になったが、リハビリかなんかで、ちょくちょく遅れて登校したり、早退したりも多くなった。
そんな感じの生活が続いていたある日、事件は起こった。
Hがリハビリの為に早退することになり、別の女子に連れ添われながら教室を出て行った。
それからほんの少し間が空いて突然、廊下の方から女子の悲鳴が聞こえた。その時は、自分も当事者だったので良く覚えている。


364 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/11/05(土) 06:37:44.10 ID:9V/7Rjgx0

俺は廊下側の席に座っていたので、何事だろうと、そっと廊下を覗いてみたところ、AがHを押し倒し、左足を掴んでグイグイと引きずっていたのだ。
慌ててクラスの男子と一緒に飛び出して、Aを無理やりHから引き剥がした。
先生も飛び出してきて、何とか事態は収拾したのだが、Hの方は、引きずられながら左足を引っ掻かれたらしく、所々に血が滲んでいた。
連れ添った女子の方も、顔を殴られたらしく泣いていた。相当怖かったんだろうと思う。
一方Aの方は、取り押さえられながらも、奇声をあげて、無茶苦茶に暴れまくっていた。
その時、初めて執着しているAを間近で見たが、目を剥き出しにし、涎を垂らしながら唸る姿は、本当に鬼気迫る様な感じがした。

それから3人とも先生に連れていかれて、授業は一時中断。
その後、戻ってきた先生に自習を言い渡され、その日は昼間で授業が開かれることはなかった。
Aはその後もHに執着し続けたらしく、自分の学年の廊下をウロウロ巡回したり、教室を覗いてくるのをたびたび目撃した。
これは後から聞いた話なのだが、その時にはすでにAは、学校側から自宅謹慎するように言われていたらしい。
それでも親の目を盗んでは学校に無断で侵入し、廊下や教室を監視していたらしいのだ。
そう言う事もあってか、Hが再び学校に来たのは、Aが転校か何かで来なくなってから暫くしてのことだった。
それからは何事も無く過ごし、Hは別の普通学校に進学していった。



365 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/11/05(土) 06:39:04.43 ID:9V/7Rjgx0

それから月日は流れて成人式。
小学校の同窓会に出席し、久しぶりに会う友人達との再会を喜んだ。
それからは集まった友人たちと乾杯し、様々な思い出や、近況について語り合った。
そんな感じの話をしていて、ふと。上記のAについてのエピソードを思い出した。
今思えば、笑い話にするには不謹慎すぎる話題だったが、酒が入っていたせいか、再会に浮かれていたせいか、何気なく話題にだしてしまった。
するとヘラヘラ笑ってた友人達のうち数人がピタリと押し黙り、お前聞いてないのか? と神妙そうな顔で訊ねてきた。
一瞬ふざけてるのかと思ったが、あまりに真面目な感じだったので、一体何のことなのか、詳細を聞いてみた。

友人曰く、Hは中学二年くらいの時期に、通り魔に襲われて亡くなったらしいのだ。
当時、地元の新聞にデカデカと出てたらしく、どうやらHは、左足を切り取られ、出血多量で亡くなったらしい。
左足は路傍に捨てられており、何故か右足の義足の方も、取り外されて捨てられていたらしい。
人通りの少ない道での犯行で、目撃情報は無く、犯人も未だに捕まっていない。

ただ、事件発生数か月前、現場付近で奇声をあげながらうろつく、謎の人物が目撃されているとのことだった。
Aの行方は、未だ知らない。