377 フロムバス釣り板 2007/05/28(月) 17:36:32 ID:XIHa13ZQ0
ついでに気になった話があったんでもう1つ投下します。 

「黒いカッパのおっさん」 

それは以前書いた拾ったPOPーXの話を経験した年(4年前)の秋の事だった。 
秋田に住んでる弟が、久々に連休が取れたのでワシと釣りがしたいと連絡してきた。 
「だら、こっちも無理矢理連休取るで、M野でも行ってゆっくり釣りしようぜ!」 
という感じで釣りの予定は決まり、ワシは連日殺人的な残業をこなし休みを取った。 


M野ダムとは、東北屈指の大型が釣れる事で有名なリザーバーだ。 
最近ではバスワールドの取材なども行われてる。 
ワシと弟が合流していざM野ダムに向かったのは、秋も深まる10月中旬の 
秋晴れと言うにふさわしい、平日の昼下がりだったと記憶している 

378 フロムバス釣り板 2007/05/28(月) 17:37:29 ID:XIHa13ZQ0
弟はその年に買ったばかりのパントを売り払い、何を思ったかフロートボートを2艇も 
買って車に積んで来ていた。どうやらワシに乗り心地を味わわせたかったらしい。 
ワシは準備をする弟を尻目に陸っぱり開始!←我先野郎 
フロッグでワンドの奥を攻め、いきなり52cmを釣り上げ弟を凹ませるw 
「大丈夫!これからもっと釣れっから。今日は良い感じだぞ~!!」 
と弟を励まし、勢いよく出船するが全く釣れない・・・・・。 
しかもあんなに晴れてた空が、僅か1時間程の間に曇ってきている。 
ワシはキャスティングの回数を減らし、なんとか弟にいいバスを釣らせようと、 
ポイントを見定める事に徹する事にした。 
「あそこ入れれるか?プランク(ZEALのシングル水車)投げろ。そう!で、ポーズ。」 
などとアドバイスを繰り返すが全く釣れない。出もしない・・・・・。 
もう一番おいしい場所に行くしかないと思ったワシは、弟に上流に向かうように言った。 

379 フロムバス釣り板 2007/05/28(月) 17:38:49 ID:XIHa13ZQ0
ワシ等が向かった上流は、沈み橋、オーバーハング、なる木(50UPがなる木)と呼ばれる 
立ち木など、ランカーサイズがかなり出ているMダムの一級ポイントの集まりだった。 
非常に不安定な連結フロートボートが上流域に入った時、ワシは妙な違和感を覚えた。 

誰かが見ている・・・・・・・ 

上流域は今や曇りどころか薄い霧までかかっている。 
ワシは『こんな時に変なモン見たくない!』と、視線は無視する事にした。 
弟も何故かに無口になっている。ワシが知る限り弟は霊感的なものは無い。 
しかも霊なんて全然怖くないと言う。きっと能天気な母親の血が濃いのだろう。 
暫くぼーっと前進してたのだが、あるポイントでワシは小さな水音を耳にした。 
その頃には誰かの視線は頭痛に切り替わって居た。小さなインレットがある・・・・・ 
ワシが視線を向けた先には、柳の木がオーバーハングしているインレットがあった。 
その時ワシは凍り付いた。 

柳の幹の横に真っ黒な何かが居る・・・・・・・目が・・・合った・・・・・・。 

男である事はすぐに解った。しかしその男が居る周りが真っ黒なのだ。 
目だけは血走っているかのようにギラつき、凄い圧力でこっちを見ている。 
その姿は、まるで夜に真っ黒なカッパを着込んだような闇色だった・・・・・・ 
硬直しているワシに気付いているのかいないのか、弟はエレキのスピードを上げた。 
そこはバックウォーターに絡むインレットである。攻めない手は無い筈だ。 
ワシは呪怨の塊のようなおっさんの視線から何とか逃れ、弟と更に上流に上った。 
そこで弟はかなりデカいバスを豪快にバラし、バカ兄弟に笑顔が戻った。 
しかし、帰りにはまたあそこを通らなければならない・・・・・・ 

380 フロムバス釣り板 2007/05/28(月) 17:40:00 ID:XIHa13ZQ0
その後バイトも無くワシ等は移動する事にした。 
巨大なかるがものような連結フロートボートは、ゆっくりと黒いおっさんのポイント 
に差しかかる・・・・・・・・ワシは頭の中で読経しながら目を閉じた。 
それでもおっさんの存在は否応なくワシに迫って来た。 
耳鳴りだか何だか解らん音が経を邪魔し、頭痛で重石でも乗せられたような状態になる。 
弟はまたしてもエレキのスピードを上げ、そのポイントをスルーした。 
上流域を過ぎてから、少しづつワシの全身の重さは軽くなり、二人で釣りを再開した。 
ワシは何で弟があのポイントをスルーしたかは聞かなかった。 
そしてワシが見たものの事も話さなかった。 
まだ寒気はあり、気分も悪かったが、弟との釣りを無理矢理にでも楽しもうと思った。 
弟との釣りの時間は、大人になった今、年に一度あるか無いかの貴重な時間なのだ。 
暫く二人で岩盤のポイントを撃って、小さなワンドを見つけた。 
「兄ちゃん投げたら?デカいの付いてそうじゃない?ココ。」 

無理です・・・・・・・ 

だって、あのおっさん、ここまで来ちゃってるもん!! 

その大岩と岩盤で出来た小さなワンドの上の方に、あのおっさんの姿があった。 
黒いカッパを着たように、全身真っ黒でワシを見下ろしている・・・・ 
カッパは例えで、周りを黒が覆ってる感じだ・・・・・ 
黒・・・・死の色・・・・・・・・・こんなに霊を怖いと思ったのは久々だ・・・・。 
ワシはおっさんの姿をチラ見しただけで速攻で目を逸らせ、下を見たまま弟に言った。 
「今日は・・・もう帰ろうぜ・・・・・・」 
「・・・・・・・・・・そうだね・・・・」 
夕マズメになりかけの、トップウォータープラッガーにとって一番燃える時間帯に 
ワシ等は帰路についた。 
ワシは一度も後ろを振り返らず、スロープでも一度も水場を振り返れなかった。 


381 フロムバス釣り板 2007/05/28(月) 17:40:48 ID:XIHa13ZQ0
その後暫くの間、ワシはM野ダムには行けなかった。 
今でも上流には絶対行かない。 
後から知った事だが、黒いおっさんの目撃例は他にもあるそうだ。 
M野ダムに通い込んでるボーターにも、上流は何故か気持ち悪いと言う人も多い。 
自殺も、全国ニュースになった死体遺棄もあった場所だ。 
ワシと同じ物を見たかどうかは知らんが、霊なんて珍しくもない場所な筈だ。 
ただ、あの黒いおっさんは他の霊達とは全然違う、殺気のような物を身に纏っていた。 
見た物を取り殺す類の、黒い怨念だ。ワシは運が良かっただけかもしれない。 
霊感体質な人は、絶対M野ダムの上流には近づかないほうがいい。 
そして、時間をおいて弟に何故あの時あのポイントを撃たなかったのかと聞いてみると、 

絶対見てはならない、何かの存在を感じたから。 

だそうだ。なんだ・・・お前もやっぱりワシと同じ血流れてんじゃん。 

                                    おわり