俺が大学に入って一人暮らし始めたころの話。

六畳一間の1Kタイプ、ユニットバスで
台所は玄関横っていう
ありふれた学生向けのワンルームマンションでした。

築10年くらいだったかな。

古くて、隣のビルとも近接してて、
部屋の中は暗かったけど、
リフォームされててまぁまぁ綺麗だったから満足してた。


ある日、

「チュン、チュン、チュン」

ってスズメの鳴き声で目が覚めた。

夜型の人や早朝起きる人は知ってると思うけど、
明け方近くなって空が白み始めると
スズメって鳴き始めるよね。

俺も大学生になって夜型の生活になってたから、
夜通し遊んで部屋に戻って眠りにつくころに白み始める空と
スズメの鳴き声って何回も聞いてた。

その時は前の晩、早くに寝てたから

「おっ、もう朝か~」

って思って目を開けて窓から外を眺めたんだ。

そしたら、外、まだ真っ暗でやんの。

「空耳か~」

と思って寝なおそうとすると、

「チュン、チュン、チュン」

「あれっ?なんで夜中なのにスズメ鳴いてんの?」

って思ってよく聞きなおすと

「ピチャン、ピチャン、ピチャン・・・・」

水滴が垂れる音だったんだよね。

「蛇口が緩んでるのかな?」

って思って目をつぶって、
そのまま寝ようとしたけど、耳について寝付けない。

「しょうがねーなぁ。締めにいくか。」

と思って起きようとしたら・・・金縛りですよ。

初めての体験だった俺は

「あれ?何だ?ナンダ?」

ってなってしまったけど、
不思議とパニックにはならなかったんだ。

ふと気付くと部屋の中に人の気配がするんだよね。

目はつぶってたし、
その時は目を開けて確認しようという事も思いつかなかった。

そしたら何かボソボソ話してる声が聞こえるんだよ。

よく聞くと

「・・・・この・・・だ。・・この部屋だ・・・。」

って言ってるんですよ。

「えっ?!」

っと思ったその瞬間、
仰向けで寝てる俺の左腰の辺りに激痛が起こったんだ。

「痛て~っ、チクショー。」

反射的に手で腰を押さえようとしたんだ。

その瞬間、金縛りが解けたんだろうけど、
左手が動いて腰を押さえれたんだよね。

でも、左手が腰を触る前に、
布団越しに、確かに人の頭の感触があって、
その感触がスーッと消えてから腰を触れたんだ。

気がついたら汗ビッショリだったよ。

それからしばらくの間は、怖くてしかたがなかったけど、
結局その部屋では以後何も起こらなかった。

俺自身にも何も起きてない。

落ちがない話で怖くないかもしれないけど、
俺が唯一体験した不思議な話ですた。