とある家の庭にあった古い井戸の話。
井戸が使われなくなってずいぶんたつので家の人が取り壊しの工事を頼みました。
ある日、工事を頼まれた男が井戸を見にやってきました。しかし、男はその夜から悪夢にうなされるようになってしまったのです。夢の中で男が井戸を取り壊そうとすると、中から赤い着物を着た女が出てくるのです。


そして、手がバッと伸びてきて男の腕を掴みすごい力で男をひっぱり、耳元でこうささやくのです。
「壊さないで・・・」
そして、決まって井戸に落ちる寸前で目が覚めました。
何日も同じ夢を見るので、男は怖くなり家の人にそのことを話しました。
すると家の人の顔が青ざめていき、ほそぼそとした声で語り始めました。
「じつは、これまでも工事を頼んだことがあるんです。けれど、みんな断られてしまうの。」
心配になった家の人は、安全を祈って、取り壊す前におはらいをすることにしました。おはらいをしてからは、
男はその夢を見ることなく、無事に工事が終わりました。
ところが、その夜のこと。忘れ物に気づ居た男が井戸のあった庭に戻ってきました。すると地面から、
「どうして壊したの・・・」
と、女の声が!
驚いた男がその場を立ち去ろうとすると、地面からバッと腕が伸びてきて、
男の足首を掴むのです。男はジリジリと地面の中に引っ張られて行き、体の半分が地面にうまって・・・・、
「ああーーー!」
そこで、男は自分の叫び声でめをさましました。工事の日以来、男は毎晩同じ夢を見続けているそうですよ。